あなたの為に生きることにすっかり慣れてしまっていた私。
朝日を浴びて私ではない人とどんなふうに目を覚ましたか聞く。
開け放った窓に、息をするのがこんなにも楽になったわ。
彼女に一つだけ
言っておきたいことがある。
知っていた?
痛みも気に留めず
夜道を裸足で歩いたわ。
彼の心は今はもうあなたの手の中。
なくさないで
壊さないで。
灰になった愛を両手に抱えて運ぶために
夜道を足を血に染めながら。
彼の脈は今はもうあなたの瞳に映っている。
なくさないで
壊さないで。
灰色の1月の雨が彼の窓を叩くといい。
抱き締めるのは私じゃなくても、
私を覚えている。
思いがけず私の名前を口にすればいい。
全て覚えていることを黙っていればいい。
窓の外ではいまいましい嫌な雨が街灯を灯し出す。
私の優しい少年、どうか震える私を許してね。
泣きながら囁いた静かなさよなら。
忘れないで。忘れないで。