霊碑
何処へゆくの 貴方は
私を措いて どこまで
埃臭いマグカップは
暖かな珈琲も要らないと言うように
静かにそこを動かない
空缶に刺さる煙草たちはもう随分干からびて
バスタブにはりついたまま
静かにそこを動かない
鋭敏だと言ったでしょう
勘繰りが酷いのです
やはり貴方もあの子も
人間らしいひとでしたか
喉の奥にはりついた冷たく苦い魂は
腹の底に沈んで行き
静かにそこを動かない
震える手脚 孤独に負けて
倒れた床は剣山のよう
凍える心臓 悪事に克てず
静かにそこから動き出す
何処へゆくの 貴方は
私を措いて どこまで
触れたラックは鈍い音
握ったそれは錆びたにおい
お得意の アンテナで
大好きな貴方を追跡、追跡。
流れ出した紅により己の魂浄化
あの子へ贈る腸髪のサーカス
静かにそこを動かない