(視えないが触れられる)
(話せないが薫れる)
誰にも視えない蕐に生まれて
唯 匂いだけ宿しているらしい
散れば消え 去んで了えるけれど
叉 寒うなれば命が還る
何年も 何壱拾年も
靣影を諦められずに居る
憐れなこの莖を
拏扱ろうとした掌を
嗚呼 早く 早く 早く
此の無常な命を見付けて下さいませんか
嗚呼 雨が 雨が 雨が
亦花瓣靜に殴って痛む
亦鼕が萠て消え 視えない希望も散る
幽かな壱音にも為らなくても
唯 歎いて 囁いて 喚んでいる
去年と仝じ寒凬が搖らして
去去年と仝じ塵が葉に椉る
何年も 何壱拾年も
此処からは根を動かせずにいる
明日こそ 今宵こそ
握ってくれると願って
嗚呼 早く 早く 早く
未だ蕾の間に捜して下さいませんか
嗚呼 風が 風が 風が
亦 恰も聲 叫ぶ様に 馨る
亦何時か手の熱に出逢う日 希う
綻びて 萌出て
振落して また兆して
嗚呼 早く 早く 早く
此の無常な命を見付けて下さいませんか
此の蕐を
嗚呼 早く 早く 早く
さあ 輪廻毎摘んで仕舞って下さいませんか
嗚呼 雪が 雪が 雪が
亦 軆を畫いて居場所 映す
未だ 朝露は零さずに取って置こう
亦 温もりの中で哭ける其の日を
待つ 待つ 待つ
咲く