通り過ぎた雨に
細い肩を濡らして
あの娘は一人ぼっちに
なろうとしている
淋しいのなら忘れよう
人の心なんて
にぎやかなお祭りの
人ごみの中で
浴衣がけ 細い肩 通り雨
二年ぶりにたずねた
下町のお祭りは
まるであの日と同じ顔で
むかえてくれたのに
久しぶりなら忘れよう
なつかしさなんて
風車くるくると
音をたてる夜に
浴衣がけ 長い髪 通り雨
幸せすぎてこわいと
大吉破いてすてた
何もかもが昔に向かって
走り去ってゆく
思い出すなら忘れよう
おもいでなんて
指切りがほどけては
いけないはずなのに
カラカラと石畳 通り雨
赤い鼻緒切らして
上目使いに笑った
かわいそうなくらいの
小さな胸もと
悲しいのなら忘れよう
君の笑顔なんて
熱い涙足もとに
はじけて落ちた日に
ほほ濡らす 悲しみの 通り雨