ふるさとはどこから始まるだろうか。
きみの初等読本の挿絵から。
隣の家に住んでいる
信用できるよい友だちから。
または古里の始めは
お母さんが歌った歌からだろうか。
どんな苦難があっても、
私達から取り去ることのできないものからだろうか。
古里はどこから始まるだろう。
門のそばの秘密のベンチから。
野原の、風にたわんだ
あの白樺から。
あるいは、古里は春の
モクドリの鳴き声と、
果てが見えない
この田舎道から始まるのだろうか。
古里はどこから始まるのだろう。
遠くから光る窓から。
私達がどこかにたんすのなかで
見つけたお父さんの古いブジョーノフカ*から。
もしかしたら古里の始まりは
電車の車輪の音から 、
若かった頃の彼女への
誓いからだろうか。
古里はどこから始まるのだろうか。
* ブジョーノフカは赤軍の兵士の帽子。