あれからは詩を書き続けた
哀しみにペン先ひたして
想い出で余白をつぶした
君の名で心を埋めた
井の頭まで行ったついでに
煉瓦荘まで足をのばした
運良く君が住んでた部屋が
空室なんで 入れてもらった
煉瓦荘 売れない詩人とデザイナーの卵
煉瓦荘 窓まで届いた林檎の木の香り
倖せの形は見えない
でもぼくは心に描ける
椅子の影 シーツの襞にも
倖せの尻尾が覗いた
家具のない部屋 何故こんなにも
小さく狭く見えるのだろう
ここで絵を描き 飲んで歌って
朝になるまで寝顔見てた
煉瓦荘 屋根まで上れば副都心が見えた
煉瓦荘 心に煉瓦を積み崩した部屋さ
毎日が時代の空気に
息づいてあざやかだったね
傷ついた深さを計れば
愛してた深さもわかるよ
ぼくの創った石膏像は
似ても似つかぬ君の微笑み
でもひとつだけ似ていたのは
石で出来てた君の心さ
煉瓦荘 崩れた白壁 荒れた庭の草よ
煉瓦荘 ぼくらの青春眠っている場所よ
あれからは詩を書き続けた
哀しみにペン先ひたして
出来るなら何も書いてない
人生の白紙が欲しいよ