ふたりで歩く時は、綺麗な夢を語りあって、
いつも無垢な笑顔で、貴方だけを愛してる。
夜を虚飾[かざ]り、泡沫[あわ]を纏い、
夢のためにユメを賣れるなら。
ごめんね。人魚[おんな]は嘘をつくの。
「恋人ごっこ」しましょう。彼氏[カレ]の知らない顔で。
午前０時の鐘[コール]が鳴るまで、綺麗にヨゴしてあげる。
今夜限りの行為[こい]にしましょう。
この海底[へや]を出たあとは、
「アナタどこかで、お愛したかしら？」
と幻姿[まぼろし]に還るわ。
向かい合わせになって開くカーテン。
暗い欲望を地下空間で。
アリエないことすぐ想い描く。
お仕事派の鋭い美学。
研く鱗[からだ]は簡単に演戯するわ。
くだらない愛撫[ラブ]、全部スルーしちゃう。
勘違いなリクエスト剥き出すな。
ねぇ、今の本気にしてんじゃない？
初めてとか、特別とか、熟れた台詞でごまかして。
愛してるだけは、彼氏[カレ]のために。
「騙し愛」をしましょう。人魚姫の代償[かわり]に。
この液[しずく]で潤した海を、華麗に游いであげる。
顔も名前も知らない男[なみ]に揺られてるこの時も、
ふいに貴方を想い出す瞬間が、私を満足[みた]してく。
夜は明解[あけ]る。泡沫[あわ]も消える。
朽散[くち]てゆくしかない。わかるでしょ？
美しい今こそ、遊女[ユメ]を賣るの。
ユメが醒めたら、愛された鱗[からだ]の証拠を、
午前０時の冷たいシャワーで、器用にすべて洗い流して。
恋人事しましょう。彼氏[カレ]のよく知る顔で。
貴方はどうか何も知らないまま、私だけを愛してね。
私はいつも無垢な笑顔で、貴方だけを愛してる。
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