赤い影に 誘われて
意識の淵で 我に返る
世迷言(よまいごと)は 泥濘(でいねい)に沈む
只 只 只 眺めていたんだ
紅を挿(さ)して 夢衣(ゆめころも)
五月雨(さみだれ)の都に浸した
つたう露も 渇くほど
火照る肌は 救われぬ
華は散りとて世は回るる
憂(う)き背中は 悲しきかな
この胸を締め付ける 儚さの香(か)
風は立ち民は我れ先と
ハイカラに染まる町を横目に
我は此所(ここ)で 灰に成る
桜吹雪 ハラハラ舞い散る度
患(わずら)うが如(ごと)く 君想う
通り過ぎた季節を血で染めて
生命の意味を刻む
命果てる其(そ)の日迄(まで)
籠の中の鳥の如(ごと)く
色街(いろまち)慕情を鳴く
革新的なデモクラシー
世俗が決めた囲いの中
気後(きおく)れした人々が集う場所
傾城(けいせい)町二番通り
冗句(じょうく)のような一夜にも
氷のこゝろは踊らない
この体を通り行く情欲など
あてにならぬ
嫌なニウスもどこ吹く風
捨てた本音は 藪(やぶ)の中
この胸を締め付ける 刹那(せつな)さの音
風は立ち 民は我れ先と
ハイカラに染まる町を横目に
我は息を止めてゆく
桜吹雪 ハラハラ舞い散る度
患(わずら)うが如(ごと)く 君想う
ふと渇いた慕情を掬(すく)い上げ
人目忍び慰める
命果てる其(そ)の日迄(まで)