静まり返り眠る街を駆けゆく
吹き抜け踊る風に乗り夜の淵へ
輝く月がその横顔を捉える
冷たく光る左手は何を掴む
解れゆく世界の欠片をひとひら
意思の火を片手に縢り歩く
終わりなど見えない仕組みなのだから
問う事は諦め一つ一つ
絓糸途切れ気付けば唯一の針
縋る事さえ許されずに膝を折る
水面に映るツギハギだらけの身体
空蝉に問うこれは夢か幻か
くたびれては眠り赤い夢を見る
篝火は倒れて空を焦す
急き立てられるようにゆらり歩き出す
孤独な太陽の様に繰り返して
繋ぎ止める全ての火を
澄み切った青空岩陰にもたれて
頬撫でゆく風は「おやすみ」と呟いた
解れ解れ欠片に戻る現世の記憶は
霧散の瀬戸際を未だ見ず
辛うじて留める形を繋ぐ敢え無い魔法は
掛け替えの無い命の影
動かぬその右手にはクチナシの花束を
地に返る魂に捧ぐ餞
残された世界には縁なしの絶望と
願わくば暫くの永遠を