海鳥(うみどり)が舞い飛んで水面(みなも)光る記憶
もうそこには誰もいない
もうそこには俺もいない
潮騒(しおさい)を切り裂いて
江ノ島の上空を戦闘機が飛んでいった
過ぎて真昼の波打ち際
過ぎて真昼の淡い夢
ほら俺には何も無い
無くたって何でも無い
今日が過ぎて昨日になる
今日を越えて明日に向う
テレビを消して耳を澄ます
遠くで消防車のサイレンが鳴っていた
過ぎて月夜に透ける言葉
過ぎてあの日の黒い髪
俺は何時(いつ)でも此処(ここ)にいる
何時(いつ)でも此処(ここ)に在る
何処(いずく)も此処(ここ)に成り
此処(ここ)から歩み出す
五時の鐘が淋しくて訳も無く泣いてしまう
泣いた顔が可笑しくて訳も無く笑い出す
それでいいんだ 大丈夫なんだ
訳なんてくれてやる意味なんてくれてやる
過ぎて太陽の焦げる臭い
過ぎて真夏のアスファルト