すり減った体を倒したのは
冬を超えるために来た島
楽園だと聞いていた
全てがあった
まるで誂えたかのように
違う ここじゃない
俺が生きるのはここじゃない
温い風に 豊かな陽に
玩具のように撫でられて
捨てた故郷の重さを知る
大洋を逆さに行け
天が無謀と囁いても
郷愁を 切望を
尾羽がしたためる
鳥を欠いた故郷では
誰が朝を謳うのだ
命より大事なものを
抱きしめるための旅
「邪魔だ」 「どけよ」
「恥ずかしい奴め」
仲間たちは俺を罵った
知ったことか 俺が恥じるのは
海を渡れるほど軽い命惜しさに
逃げてしまった弱さだけだ
さあ!
見飽きた日没に
退屈だと愚痴ろうぜ
木陰で雨を呪いながら
腹でも減ろうぜ
理由もなく風は尖り
奔放に空は冷えていく
「もう止めろ」 「もう止めろ」
乾いた羽が呻く
俺が自由になるために
俺の許可すら必要ない
ただ一灯を頼め
爛れても恋慕え
削れ切った体を倒したのは
生まれ育った故郷
見る影もなく枯れ果てて
命が凪いでいた
冬に殺されるのは
故郷の方だったのだ
見たか これが俺の故郷だ
どんな姿だろうと
鳥すらも重そうな
か弱い大地でも
飛んでやれもしない俺を
健気に拾う故郷を
抱くように羽を開き
うらぶれた氷の上で
満たされて焼け焦げるのだ
ただ一灯を抱えて