薄い心臓の襞をめくり
吹き寄す哀しい遠音(とおと)の残響
街は幸(さきわ)う魂流し
幾千の灯りが舞う
淡く洩る光の尾に縋り付いて
宵に浚われどれほど澪標
掬い救えどもあえかなこの指の
隙間からまた命が零れてく
祭は囃し立てり
月は東に日は西に
入相戯(ざ)れた兄弟(けいてい) 夜は骸
泡沫(うたかた)より軽く儚い
淡く洩る光の尾を見送りて
独り旧い傷を雪(そそ)ぐ岩清水
掬い救えどもあえかなこの指の
隙間からまた命が零れてく
恒河沙ほど不幸に穿たれて
肺を漏る希望を離せるか
呼吸はうねり幾千の灯を揺らす
流る魂 行方に逆巻いて
帰れ帰れと手を引く才の華
掬い零せどあえかなこの指の先にまだ命が掴めるか
嗚呼 夜は骸――