一つ二つ滴る雨 鉛色の叢雲が覆う
蝉時雨が聲を潜め 風鈴が響く
傘持つ人は早歩き 不達の旋律 独り濡れる
終り際の蒸し暑さに 黒髪が靡く
駆足の社會に 届かないなら 此の歌は
人を射つ 雹落に 變えてしまいたい
宙を裂いて 地を叩く
空隙を僅か震らす
幾佰の迹 陽の目が射て
消え損じた夏の音と 溶けていく
灼けた道路 隙無く埋め 響み起こす不揃な硝子
蹴飛ばし歩いた黄昏 茅蜩が集く
燈りを覓める其の眼が 眉顰める詩 忘れている
拾い上げた雹を投げて 夕闇に隠す
正当健全な基準が 雑音と評す 此の歌は
耳を惹く 雷鳴に 變えてしまいたい
軌蹟剞み 形失くす
静謐を握り締める
遍く降れ 立ち止まって
雹落に此の歌 重なる様に
宙を裂いて 地を叩く
空隙を僅か震らす
幾佰の迹 陽の目が射て
消え損じた夏の音と 溶けていく