二つの鏡が向き合い、
音をたてて反射し合った。
自分によく似た人に出会った時、
私はそんな音をたてるだろう。
子供も大人も、鏡に映る自分を見るのが好きだ。
映されように夢中になり自分もまた鏡であることを忘れれば、
人は静かな空間をもてあまし嘘しさを覚える。
私は鏡だ。
光の届かない場所で動けずにいる者に
手を差し伸べるのではなく、できる限り近くに自分を置く。
そして同じ景色を観る。
痛みは、誰かと共感できたなら
気持ち良いものに変わるということを知ってる。
悲しみが減るのでも世界が変わるわけでもないが、
私の中で反転された世界は確かに新しい景色に見えた。
誰もが自分に似たものを探している。
どんなに自分が嫌いであろうとも、自分に似たものなら愛せる。
尊敬や憧れという感情には、愛が無い。
然るに人が一生の中で最も愛すのは、
世界で一番似ている人ーーー自分の子供。
私は子供だ。
正しい道を進んでると信じているから、途中で捨てたもの
あきらめたものを、 犠牲だなんて思わない。
空が目を閉じる。