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天の笹舟 [Ama no Sasabune]
天の笹舟 [Ama no Sasabune]
turnover time:2024-11-05 05:36:12
天の笹舟 [Ama no Sasabune]

一番下の引き出し 奥底

仕舞いこんじまってた 一張羅(いっちょうら)

久方ぶりに 袖を通せば

あれよ あれよ ひらひら舞うよ

踊る足取り さそわれ歩くと

下駄を鳴らして待つ影 ひとつ

口の端(は)上げて 眼(まなこ)で射せば

あれよ あれよ ふらふら堕ちる

紅いちょうちょが飛び交って

夜風に凪(な)がれた 笹の葉つまむ

そよそよと流れる 果ては天の川

はっぱの御舟(おふね)で 連れてっとくれ

己(おまえ)が漕いでくれるのか?

わっちの手を取りゃ 崖っぷち

泳いでくのは 鮒か鯉

溺れていくのは悲し 恋

己(おまえ)が結んでくれるのか?

望むべくなし 短冊へ願い

塞ぎ止められぬ もう止められぬ

閉じ込めていたのは 桐の箱

これっきりだの、馬鹿をお言いよ

理(ことわり)離れた ちょうちょの群れは

あれよ あれよと 増えていく

蒼い月が頬を冷やせば

叢雲(むらくも)流れて 指先絡める

ざわざわと高鳴り 衣(ころも)が擦(かす)れ

このまま果てまで 連れてっとくれ

わっちを燃やしてくれるのか?

さだめを決めれば 野となれ 花と

ぱちぱち音たて、炎が奪う

きしんだ心を、己(おまえ)が奪う

わっちを盗んでくれるのか?

燃やせど奪えど 消えてはくれぬ

動かぬ鉛(なまり)が 踝(くるぶし)掴み

その背に見えるは、大きな獄門…

ねえ、呼んでくれるな

もう、逢ってくれるな

燃やし尽くされ 灰まで消えて

後に、何が残ろうか…

それでも、涙はまだ枯れぬ

ふたりを なぞらえ こう告げようか

他生で添い遂げ いっしょになって

お空の川で泳ぐ鯉

それとも 夜空を飛び交う蝶に

ふたりを悼んで こう願おうか

流れるくず星 一つにかけて

このまま続く 天の川の果て

笹の御舟(おふね)で 連れてっとくれ

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